ありがとうの量的限界説について

Posted on 2012.09.10

Category: COLUMN_Mani




今から20年前、小学校に上がることになったわたしは “友達100人できるかな”というラインを聞いて、社会とは何と広大なのか、という言葉には表せないものの、100人の友達という膨大な世界に、全く現実感を見い出せないでいました。当時流行していた”100人乗っても大丈夫”という物置のコマーシャルと合わせて、100人という数字は相当な人数に思えたからです。

21世紀の現在を生きるわたしは、ありがたいことに、数々の増減を経つつも”友達100人”という世界にいるのではないか、と思っています。友人の多い少ないに関する感覚は人それぞれですが、わたしは孤独に弱いので、多い方が幸福のように感じます。

mixiが出始めた頃、友達という意味をさす”マイミクシィ”の最大数が1,000であることを知って、何事もインフレーションであり、現代は”友達1,000人できるかな”の世界なのか。とも感じました。(ネット上の友人と、現実の友人はやはり少し違うようにも思いますが、あえて同義的に扱います)mixiに限らず、TwitterやFACEBOOKでは自分の友人の数が表示されます。

友人が増えたり減ったりする感覚を具体的に数値化されるようになって初めて、”友人は減ることがある”ということを意識するようになりました。mixiのようなソーシャルネットワーキングシステムの場合、友人がそのシステムから退会することによって、数値が減る場合が多いような気もしますが、現実にしろ、ネットワーク上にしろ、友人というのは減るのものなのです。

何も”友人とは減るばかりである”というわけではなく、新たな出会いというものは無限にあります。それから”永遠の友情”というものがあることも信じています。けれど、mixiのようなシステム的な限界値のない現実においても、友人と呼べる存在の数には量的限界があるのではないか、ということを考えるようになりました。

その根拠は簡単なことで、新たな友人が出来ると、その分、旧来の友人と疎遠になるからです。それは意識して「あいつとはもういいや」ということではなく、物理的に時間が足りなくなるからです。誰かと会うために時間を使えば、他の誰かと会う時間が減る、ということです。

たとえ数年に一度しか会わなくても、わたしたちは友人です。という人もいます。わたしにもいます。交際の頻度が問題にならない関係の友人関係も確かにあります。同時に、交際の頻度が問題になる関係があるからこそ”疎遠”という言葉があるのでしょう。以上のことから、”同時に存在し得る友人の数には限界がある説”をここに提唱させて下さい。

これは寂しく聞こえるかもしれませんが、あくまでも”同時に存在し得る”ということです。累計的に考えれば、わたしたちの人生には無限の友人が登場するはずです。

と、長い前置きを経て、本題に入ります。今度は”人の一生における「ありがとう」と言われる回数には限界があるのではないか説”です。

わたしは恩着せがましい性格なので「ありがとう」と言われることが大好物の一つなのですが、どういうわけか24,5歳の頃から仕事や遊びを問わず「ありがとう」と言われる度に “そう遠くない未来に行われる自分の葬式に、その人が参列する景色”という、甚だしく縁起が悪く、かつ、図々しいイメージが脳裏に浮かぶようになりました。原因はわかりません。徹夜明けに言われることは多いですが、わたしは命を削って仕事をしているなどとは思っていませんし、「ありがとう」と言われることに嫌気がさしているわけでも全くありません。

とは言え、”日本人の生涯賃金は約3億円である”という言葉がある以上、極端な表現ではありますが、人間の一生とは、3億というお金に変換できるということになります。同様に、”日本人の生涯「ありがとう」と言われる数”というのも決まっているのではないか、と思うのは、ちょっとオカルトに過ぎるでしょうか。

いろはがるたにも”憎まれっ子、世に憚る”という諺がありますが、これを都合良く意訳すると、”ありがとうと言われない奴は、長生きする”ということになってしまうあたり、ややこの説の信憑性を高めなくもありません。けれど、憎まれながら世に憚るくらいなら、例え長生きできないとしても”ありがとう”と言われながらササッと消える、というのが望ましい最後のように感じています。

世のため人のため、という程の美談ではありません。”爺になる前に死にたい”という、あまりに著名なラインに通じる願望なのかもしれません。だとしたら、この歌詞は随分と不器用な言い方をしたものだな、とも思います。

最後に、もし本当に”日本人の生涯「ありがとう」と言われる数”が決まっているとしても、まだまだ到達にはほど遠いので、どうかご安心下さい。

と言ったところで、本日はこれまで。また来週にお会いしましょうね。


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