なんちゃってディレクターのためのレシピ その5

Posted on 2012.10.29

Category: COLUMN_Mani




5回に渡ってお送りしてきましたこのシリーズも、そろそろ最終回が近いです。最初は質問コーナー的なお便りから始まったものでしたが、思えば随分遠くまで来たものです。

ステップ9 ミュージックビデオを撮影しましょう

ライブビデオの撮影でバンドのビデオに慣れてきたところで、彼らのスタジオ音源に合わせたミュージックビデオを撮ってみましょう。バンドから頼まれるのを待つのもいいですが、既に音源があるのであれば、自分から提案するのも良いでしょう。どこで、どういう風に撮影するかは皆さんにお任せします。どこかスタジオを借りての演奏メインのもの、ロケ撮影、バンドメンバーによるお芝居があるもの、実写ではなくアニメーション等、いわゆるライブビデオからさらに一線を画した”作品”的なものになるはずです。

最近は都内の撮影スタジオのレンタル代も随分安くなっていて、レストランや病院等、なかなか撮影許可を貰うのが大変そうな舞台でも、そうしたロケーションが再現されたセットを借りることができます。それからライブハウスの営業時間前、例えば午前中に撮影させてくれないかとお願いするのもいいでしょう。ロケ撮影の場合は、現場の許可がいる場合がほとんどですが、許可を貰おうとしない方が撮影できてしまう場合もあります。迷惑にならない程度に、まずはやってみましょう。ドラムや照明の類いも1日単位でレンタルすることができます。

映像の展開を図と文章で示す、所謂”画コンテ”を描かねばいけないのか、という話もあります。これは中々面倒な作業ですが、結論から言うと、ないよりはあった方が良さそうです。わたし個人の感覚としては演奏シーン主体の場合のみ、バンド側の自然なアクションを活かす為にコンテを描かない場合があります。逆にお芝居的にストーリー展開があるものや、合成もの等は、画コンテがあった方が確実に良いです。必要なカットを撮り忘れることや、画が足りないために発生する、ビデオの中盤以降のマンネリ感を予め防ぐことができるからです。

とは言え、これもまずは撮影してみましょう。あなたがPVを作ろうよと提案した場合、撮影にかかる予算はバンドメンバーとあなたでお金を出し合うのがスムーズですが、多くのバンドはタダで撮ってもらえるのなら経費くらいは出してくれるような気もします。


ステップ10 ミュージックビデオを完成させましょう

撮影したものを完成させるなんて、当たり前じゃないか。と思われるかもしれませんが、ここが最大の山場なのです。これはわたしの勘ですが、我が国で撮影されている”初めての自主制作ミュージックビデオ”の6割は完成の日の目を見ず、撮影素材はハードディスクの奥底に消え、いつの間にかゴミ箱に捨てられてしまうように感じています。

これは何故か。理想と現実を目の当たりするためです。ミュージックビデオを撮りたい。と考えるようになったあなたは、かつて何らかのミュージックビデオを視聴して衝撃を受けたはずです。自分もこういったものを撮影してみたい。というのが根底にあるのは間違いありません。そして今、初めてのミュージックビデオを撮影し、編集しています。どうでしょうか。あなたが目標としていた、あのビデオと同じくらいの衝撃を人々に与えられそうでしょうか。もしイエスであったとしたら、あなたは天才です。もしくは客観性に欠けているのかもしれません。

つまり、一番最初に作ったビデオが、それはそれは素晴らしい、なんとかアワードを受賞できるようなものになるはずはないのです。あれっおかしいな。こんな筈ではなかったのにな。という気持ちが次第に、何か思ったよりうまくいかないし、もういいや。という諦念となり、最終的に未完成のままになってしまうことは多いです。

バンド側も撮影経費がほとんどかからなかった場合、タダで作ってもらうことに対する後ろめたさもあり、ビデオはどうなったんだろう。と頭では思いつつ、あなたに催促するようなことはあまりないことも、こうした未完成シンドロームに拍車をかけるのですが、ここで諦めると、おしまいです。どんなに不本意なものであれ、まずは完成させましょう。

もし足りないカットを追加で撮影することで、解消できるのであれば、バンドに協力してもらうのも手です。納得するまでやってみる、ということも大切なことです。けれど、その目標は必ず、”完成”に向いているべきです。追加で撮影するだけして、やっぱり完成されなかった、悲しきテープたちは世界中に山積みだったりもするのです。

ミュージックビデオはライブビデオと違い、”こうあるべき”というものが(細かく言えばキリがなさそうですが、平たく言えば)ほとんどありません。ライブビデオは、このシリーズ第2回に記した通り、ある程度のルールがありますので、それを踏襲すればある程度の水準にはすぐ達せられる感覚がありますが、ミュージックビデオはそうした完成度の差がとても大きくなります。

つまり、ライブビデオよりも、ミュージックビデオの方が、”とことんショボくなりやすい”のです。これは、仕方がありません。たくさん作っていくと、”どうすればショボくならないか”がわかってきます。ショボいなあ、と思っても気にする必要はありません。あなたが作り上げたそのミュージックビデオは、完成されなかった哀れな素材の叶わぬ夢である以上、比べるべくもない輝きがあるからです。

そして、あなたはディレクターになりました。と言ったところで、本日はこれまで。次回でこのシリーズは完結する予定です。また来週にお会いしましょうね。


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