なんちゃってディレクターのためのレシピ その6

Posted on 2012.11.14

Category: COLUMN_Mani




“色んなバンドのPVを撮るにはどうしたらいいのか”という質問に答えるべく、”わたしの場合”はこうでした。ということを順に記していって6週間、随分大仰なアンサーになってしまったような気もしますが、何はともあれ、”なんちゃってディレクター”シリーズは今回がラストです。

ステップ11 自然とできる仲間を大切にしましょう

ミュージックビデオを作っていると、音楽関係の人々、ミュージシャンやレーベルの人々、カメラマンやメイク、スタイリスト等の皆さんと会う機会がたくさんあります。出会う人全員と意気投合することは難しいですが、時々、年齢や性別を問わず、本当に気の会う人と出会うことがあります。この仕事を続けるにしろ辞めるにしても、これもまた一生の付き合いになったりします。なかなかそうした人に出会えなくても、焦る必要はありません。類は必ず友を呼ぶのです。気の合う合わないに関わらず、そうした人々が困っていたら、可能な限り助けるようにしましょう。貸しを作って、それを忘れるくらいが丁度いいです。


ステップ12 自分と自作のビデオを愛し過ぎないようにしましょう

ステップ10の最後で”あなたはディレクターになりました”、と締めておいて何なのですが、1本完成させたところで”わたしはディレクターです”と、あまり吹聴しない人の方が、わたしは好きだったりします。ここ最近はわたしも自己紹介を簡便にするために”ディレクター”と名乗ることが多いですが、本当は”ビデオが作れる人”くらいの感じでいたいと常々思っています。”ディレクター”とか”監督”とか”映像作家”とか、とても魅力的な響きですが、自ら名乗るのは恐れ多いことだといつも思います。

この辺りは色々な考え方があり、”自らアーティストと名乗ることで、自分をより高めることができるのだ”という人も多いです。作品を残す以上、ちゃんと責任をもって”クリエイター”と自称するべきだ。という人もいます。それもまた尤もなことです。

けれど、わたしは”アーティスト”とか”作家”という身分は自ら名乗らずとも周りの人たちが勝手にそう呼び出してこその呼称だと思っています。”自称アーティスト”や”自称映像作家”という人種の中には、ものを作ることよりも、自身の承認欲求ばかりが高くなってしまう人がいます。彼らは、望む呼称を、自然に人から呼ばれるようになるまで、待つことができないのです。それは子どもの背伸びのように感じ、醜悪に感じてしまうのです。

同時に、自分の作ったビデオを”自分の作品です”と言って、愛し過ぎない方がいいようにも思います。作ったものをないがしろにしろ、と言う意味ではありません。しかし、こちらも”自称アーティスト”に多いのですが、それを見た周囲の人と大きな温度差をもって、あばたもえくぼのように、自身の作品を愛してしまう人がいます。彼らが天才であれば、全く問題ないのですが、もしも彼らが凡才であり、ここをこうした方が良かったかもしれないなという反省も持てない場合、その切磋琢磨の機会を逸し続けることになるように思うのは大きなお世話でしょうか。

“子どもの背伸びこそ、芸術ではないか”という人もいます。これもまたその通りです。芸術には大人も子どもも関係ありません。そして、乱暴に言ってしまえば”言った者 勝ち”でもあります。故に、芸術を追求するのであれば、この話は然程問題にならないですが、ミュージックビデオを作る、というのは、芸術性こそあるものの、わたしにとっては仕事です。このコラムは”わたしにとって”の世界なので、その前提で進めさせて下さい。

“給料を貰ったら、それは芸術ではない”という言葉があります。ストイックなことです。これの賛否は兎も角として、あまりに芸術志向が高い人は、ミュージックビデオの制作に向かなかったりするのかな、とも思います。勿論まさしく芸術家と呼べる、自身の世界にどっぷりと浸けつつ、素晴らしいビデオを作る方もたくさんいますが、それでもミュージックビデオは、モチーフとなる音楽あっての世界であり、多くのミュージックビデオはプロモーションビデオと呼ばれるように、その音楽を魅力的なものとして広く世の中に伝え、売れるようにする、商業的なものです。

自己や自作の品を愛し過ぎる人は、最大公約数を探す商業的な部分と、最小公倍数を見つける芸術的な部分の折り合いをつけることに大きなストレスを覚えます。それは辛いことですが、天才でない限り、これは仕方がありません。絶対嫌だ、と思っていた他者のアイデアも、取り入れてみると意外と良かった、ということは多いです。100%やりたいことをやるのは、将来、巨匠になった時にしましょう。段々、やりたいことが出切る割合は増えていくはずです。その頃には、人々もあなたのことを”ディレクター”や”映像作家”と呼んでいるはずです。人生は長く、一生の付き合いです。

ミュージックビデオの制作について、わたしの経験したことは現在のところ、ここまでなので、本シリーズはこれでおしまいです。これからまだまだ、ずっと続いていくと思うとワクワクします。この記事を読んでビデオの仕事に興味を持って下さった方が少しでもいらっしゃれば幸甚至極というやつです。一緒に頑張りたいと思います。

それにしても、こんなに長々とビデオを作ることについて書いたのは初めてでした。意外と書くことがたくさんあったんだなと改めて思った次第。貴重な機会をありがとうございました。このコラムはあと3回で一旦おしまいですが、もう少し、お付き合い下さい。と言ったところで、本日はこれまで。また来週にお会いしましょうね。


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