放っておいてもその日はくるんだけど

Posted on 2012.11.28

Category: COLUMN_Mani




始めた頃はまだまだ夏だった本コラムも11回目を迎え、もうすっかり寒くて参っています。
前回いただいた”好きな詩人”を教えて下さいに対する回答として、フランソワ・ヴィヨンの詩をもう1編紹介します。
やや気が早いかもしれませんが、この季節にぴったりと言えなくもないでしょう。

 地面を傷つけ過ぎると、ヤギは寝にくくなる
 水を汲みに行き過ぎると、壷は壊れる
 熱し過ぎると、鉄は赤くなる
 鍛え過ぎると、鉄は折れる

 それなりに、人は誉められる
 離れていると、忘れられる
 悪さをし過ぎると、嫌われる
 クリスマス、クリスマスと叫んでいれば、その日は来る

 しゃべり過ぎると、辻褄が合わなくなる
 評判が良いと、罪も許される
 約束も度が過ぎると、守れなくなる
 願い事をすればするほど、成就する

 貴重なものほど、皆が欲しがる
 探せば探すほど、見つけられる
 よくあるものほど、買い手はいない
 クリスマス、クリスマスと叫んでいれば、その日は来る

 犬が好きだから、犬を飼う
 はやる歌こそ、誰もが覚える
 食べずにいると、果物は腐る
 要塞だろうと、攻めれば落ちる

 ぐずぐずすると、し損じる
 急いてもことを、し損じる
 欲張ると、元も子もなくなる
 クリスマス、クリスマスと叫んでいれば、その日は来る

 過ぎた冗談は、笑えない
 浪費し過ぎると、下着もなくなる
 気前が良すぎると、全てをなくす
 持っていきなさいと言えば、持っていかれる

 神を愛すれば、教会を去る
 与え過ぎると、借金ができる
 風向きは変わり変わって、北風になる
 クリスマス、クリスマスと叫んでいれば、その日は来る

 馬鹿げた生活を続ければ、いつか賢くなる
 行き過ぎれば、戻ってくる
 叱られ続ければ、立ち直る
 クリスマス、クリスマスと叫んでいれば、その日は来る

こちらは”諺のバラード”と呼ばれている詩です。”あたりまえのバラード”と言っても良いかもしれません。
前回ご紹介した”逆説のバラード”と同様に、同じリズムで軽快に繰り返した後、主題で終わります。

当時のフランスと現在の日本における”クリスマス”は随分と違うものだと思いますが、”叫んでいれば、その日が来る”という冷淡な言い回しは、今の世でも充分に通じるアイロニーがありませんか。
“神を愛すれば、教会を去る”というラインも、無信教のわたしにはちょっと難しいですが、好きなことを仕事にする辛さ、みたいに置き換えると、うむうむ。と思います。

インターネット上だと佐々木敏光さんのホームページにヴィヨンの詩と翻訳がたくさんありますので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。

それにしても、先週コラムを書き終わったばかりだと思ったらもう1週間経って次の締切になってしまいます。叫ばなくても来るものは来ます。もう今年もおしまいです。やり残したことのないようにしたいです。と言ったところでちょっと短いですが、今回はこれまで。また来週にお会いしましょうね。


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