サンタの誘惑

Posted on 2013.12.18

Category: COLUMN_Kyao



はろーきゃおです。

その昔、サンタさんがいました。
彼は確かに存在しました。

私が生まれてから此の方、毎年欠かさずにクリスマス・イブの夜には家に忍び込み、私が良い子であるかどうかも関係なしに、見上げるほど大きなクリスマス・ツリーの下に、かわいく包まれたプレゼントをそっと置いていってくれるのでした。

物心がついたころ、サンタさんの偉大さに気付き、彼を労ってあげようと思ったのです。
だって、こんなに寒い中毎年ソリに乗って外国からはるばる空を飛んで来てくれるなんて、しかも、まるでテレパシーのように私が望んでいるものを与えてくれて、顔も見せずに帰っていくなんて。
今までそれを当然だと思っていたけれど、改めて、本当にお疲れさまです、と思うようになったのです。
トナカイたちも、さぞかし大変だろうな、と。

11歳でした。

その年のクリスマス・イブの日に、ママに提案してみました。
サンタさんにクッキーを焼いてあげたらどうだろうと。
たぶん彼は疲れていて、お腹もすいているだろうし、甘いものがあれば嬉しいんじゃないかと。

ママは、「あら、ステキね」と言って、一緒にクッキーを焼いてくれました。
美味しいクッキーがたくさん焼けたので、半分以上食べてしまったけれど、一番形の良いものだけちゃんと残して、小さなお皿に盛りつけて、クリスマス・ツリーの下に置いておきました。
お手紙も書きました。
毎年本当にどうもありがとうございます、いつもとても嬉しいです、お身体には気を付けて、来年も再来年もずっと来てください、って。

クリスマスの朝、そわそわして目を覚ますと、クリスマス・ツリーの下のクッキーはなくなっていて、案の定、たくさんのプレゼントが置いてあって、さらにはサンタさんからの直筆のお手紙があったのです!

お手紙と言っても、そこらへんに置いてあった、ネピアのティッシュの一枚に、おそらく万年筆のようなもので走り書きされたものであって、英語の筆記体であったため、まったく解読できず、ママに訳してほしいと必死に頼んだのでした。

興奮しすぎて、内容は全く覚えていませんが、それは正真正銘のサンタさんからのお手紙でした。

もう、それだけで胸がいっぱいで、プレゼントをもらえたことよりも、サンタさんと交流を持てたことのほうが嬉しくて、もらった安室ちゃんのVHSを抱えてうっとり夢見心地になっていると、ママがベランダから叫ぶのです。

「かおりちゃん、おいで!クッキーのかけらが落ちてるよ!」

嘘でしょ、と思って駆けつけると、そこには本当に昨夜私が焼いたクッキーのかけらがベランダにそっと落ちていていたのです。
ああ、サンタさんは一晩中日本中の子供たちの家を回るから、たぶんものすごく急いで出ていったんだろうな、だから手紙もあんなに雑だったんだ、やっぱり慌てん坊のサンタさんだなあ、きっとクッキーをほおばりながら、ちょっとこぼしちゃって、それでもトナカイたちと一緒に空飛ぶソリに乗って、次の家に向かったんだ、という確信が、とうとう揺るぎないものになりました。

マンションの6階でした。

その年のクリスマスは忘れられない思い出となり、サンタさんの存在を垣間見てしまった幼い私は、その興奮を独り占めすることができず、年明けになって、大親友にだけこっそり話したのです。

サンタさんが来たんだよ、手紙を書いたら返事もくれたし、焼いたクッキーも食べてくれて、ベランダにクッキーのかけらが落ちていたから、本当にあとちょっとで会えたのに!と。

「それ、親だよ」

彼女は言いました。

違うよ、サンタさんだよ!と、私は言いました。

でも彼女は続けるのです。
ちょっと待って、物理的に考えて、ソリが空飛ぶとかなくない?っていうか、空飛ぶトナカイとかいるわけないし、欲しいものくれるのだって、親だから当たり前じゃん。

ものすごくビックリしました。
違うよ、違う、本当にいたもん、サンタさん来たもん!!と言いながら、さすがに幼い私でも気付いてしまったのです。

いや、ちょっと待て、本当に、ソリが空飛ぶわけない、と。

その頃は、理科の授業で、重さと計り、とか学んでいた時期だったので、特に。
ちょっと考えれば、当然のことなのに、私は相当心酔していたのでしょう。

その後の物語は皆様のご想像におまかせします。

義務教育というものは、時に一人の人間を殺します。
私は、大好きなサンタさんが、大好きだった大親友に惨殺される現場を目撃しました。
大人になるというのは世知辛いものです。
でもそれは同時に、痛みや辛さなしに大人にはなり得ないということなのです。

今思い出しても、心臓が張り裂けそうなほど痛いし、ものすごく悲しいけれど、今になって思うのは、大親友を恨む気持ちよりも、やっぱりサンタさんへの愛情なのです。
あの子がいなかったら、私は今でもサンタさんを信じていかも。

どうか、他人の夢を壊す大人にだけはならないでください。

メリー・クリスマス。


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