日本語ラップBEEF文化特集!

Posted on 2015.06.08

Category: COLUMN_Shingen


ハロー!森心言です!
最近は丁度良い気候が続いてて気持ち良いですね。
このまま梅雨が来なければ良いのに!

さて今回のコリショー!!!!は久しぶりにヒップホップのことを書こうと思います。
テーマはズバり…
“Disrespect(ディスリスペクト)”!

数年前から巷でも「ディスる」っていう言葉が使われていますが、これ元々はヒップホップカルチャーの中で生まれた言葉です。
この言葉の語源こそ、
今回のテーマ”Disrespect(ディスリスペクト)”です。

直訳すると、
Disrespect=侮辱する、軽蔑する
という意味で、その略として”dis(もしくはdiss)”というスラング、更には日本語の”ディスる”という表現が出来上がったわけなんですね。
そしてヒップホップにはラップで誰か(多く場合自分以外のラッパー)をディスる文化、所謂”ディスの文化”というのがあります。

他のカルチャーではなかなかない事なので、馴染みの無い方は「えぇ!?恐い!」って思うかもしれません。

しかし多くの場合それはエンターテイメントの一部だったり、時には自分の表現のプロモーションだったりします。
もちろんそうじゃない場合もありますが、ラップを使って観衆の目(耳)がある前提でそれをやるということは、チンピラの喧嘩とはやはり訳が違います。
実際ヒップホップのマーケットが大きい本場アメリカでは、ラッパーのディス曲が一つの世間的なニュースになったり、巷の話題になったりもします。

今”喧嘩”という書き方をしましたが、多くの場合誰かにディスられたラッパーは、”アンサー(そのディスに対する反論)”を作りディスり返します。
やられたらやり返す、半沢直樹スタイルです。

そしてこの”ディス”と”アンサー”の攻防を、
“BEEF(ビーフ)”、と呼びます。

ちなみによくこの”BEEF”のエンターテイメント性が分かりやすく例えられるのが、皆さんご存知、プロレスです。
正確にはプロレスとはまた違う気もするけど、この例えが一番分かりやすいと思うので、とりあえずプロレス的なものだと思って、恐がりなそこのアナタも耳を傾けてくれると嬉しいです。


ここまで読んで、もしかすると「知ってる!二人のラッパーが向かい合ってラップで対決してるの見た事ある!」って人も居るかもしれません。
でもラップバトルには大きく分けて二つあって、二人のラッパーがその場で向かいあって即興ラップで戦うフリースタイルバトルと、ラッパーがディスの曲を作って発表し、次にディスられた側のラッパーがアンサーの曲を作って発表して…というスタイル、の二種類あります。

僕が今回のコラムで扱うのは、後者の方です。
(フリースタイルバトルの方もいつか絶対書きたいけど!)

さて、百聞は一見にしかず。
説明するより実際に曲を聴いてみた方が早いだろうということで、今から日本語ラップの歴史の中で僕が面白いなと思ったBEEFを幾つか選んで紹介したいと思います!



◎日本で最も有名なDisソング

おそらくこの曲がヒップホップ界で一番有名なDisソングではないかな、と思います。
それが2002年にキングギドラが発表した「公開処刑」という曲です。
キングギドラ / 公開処刑


この曲の自らのバースでZEEBRAはDragon Ashのkj(降谷健志)をディス。

かつてDragon Ash「Grateful Days」で共演があったZEEBRAとkj。
しかしkjの声、フロー、ステージング、ライミングが自分のパクりだとしてZEEBRAが批判、この曲のバースでkjディスのラップを書き下ろしました。

それに対してkjはアンサーを返さず、リスペクトしていたZEEBRAのディスを重く受け止め、結果的にDragon Ashがロックバンド回帰していくきっかけとなります。

いやいやいやいや!
エンターテイメントじゃないじゃん!
半沢直樹スタイルじゃないじゃん!
やっぱり恐いじゃん!ガチじゃん!

と思ったキミ。
分かります…分かりますが、この曲は日本語ラップのディス文化を語る上でどうしても外せない曲なんです!
実際、当時中学二年生だった僕にこの曲が与えた衝撃は凄まじく、こっから本格的にヒップホップにハマったと言っても過言ではありません。
これを聴いた時の「ヒップホップってスゲー!」という感覚が今でも忘れられません。



◎分かりやすいBEEFの例。

では、ディス→アンサーという攻防が分かりやすいBEEFの例です。

それが2009年のSEEDA vs GUINNESS。

2009年の6月にラッパーGUINNESSが突如YouTubeに「SEEDA is Fake」というディス曲を発表し、ラッパーSEEDAとのBEEFが始まります。
GUINNESS / SEEDA is Fake


それに対してのSEEDAのアンサー。
SEEDA / 的を外し続ける退屈な主張 いつまでたっても進歩しないフロー


それに対するGUINNESSの再ディスソング。
GUINNESS / SEEDA is Fake2


そしてSEEDAの再アンサー。
SEEDA / LAST ANSWER



おおお…恐がらないでと言いつつやっぱなかなか恐い!笑
どっちも大胆なディスとアンサーでなかなかの迫力ですが、当時リアルタイムでこのBEEFを観ていてドキドキさせられたのを覚えています。
この4曲が全部一週間程度の短時間で作られ発表されているっていうのがミソですね。
ヒップホップファンの間では、「SEEDAがアンサーしたぞ!」、「GUINNESSがまたディス曲の続編出した!」なんて言い合いながらそのビーフの展開にワクワクするのです。


◎ラップにはラップで返す?

次に紹介するのは、先に紹介したSEEDA vs GUINNESSのラップ内でもちょいちょい出てきた「TERIYAKI BEEF」という話題。
SEEDA vs GUINNESSのBEEFの少し前に起こった話です。

これは2009年SEEDAとOKIというラッパーがYouTubeにて発表した『TERIYAKI BEEF』という曲から始まります。
SEEDA&OKI / TERIYAKI BEEF

(なかなかインパクトのある曲と映像ですが、最後照り焼きバーガーを残さず食べる演出とかエンターテイメントの部分何となく分かるでしょ…?)

ディスの相手は、m-floのverbal、RIP SLYMEのROY-ZとILMARI、WISEという四人のラッパーによるグループTERIYAKI BOYZ。
TERIYAKI BOYZが2009年1月に発表した『Serious Japanese』という曲で、SEEDA&OKIによる『Sai Bai Men』という曲の一節をオマージュにしたフレーズが使用されていたことをきっかけにSEEDAとOKIがディス曲を作り、
SEEDA&OKI vs TERIYAKI BOYZ
のBEEFが始まります。

ラッパー同士のBEEFでは暗黙の了解として「ラップにはラップで返す」というルールがあります。
しかしこのBEEFの他と違う所は、ディスられたTERIYAKI BOYZのverbalが、まさかの「自分のポッドキャストの番組にSEEDAをゲストで呼ぶ」というスタイルでのアンサーになりました。
VERBALEYEZ:SEEDA x VERBAL


このverbalの特殊な行為(番組内のフリースタイルバトルでverbalがボロボロに言われたのも相まって)には、ラッパーとしてのアティチュードを問われ、ラップ好きから多くの批判が集まりました。
しかしこの特殊な行為こそ、verbalの日本語ラップの”ディスの文化”への強い意思表示でもあったのです。

抜本的に日本での”ディスの文化”を考えるverbalと、最後までラップにこだわる硬派なSEEDAのぶつかり合いに、当時僕も色々考えさせられました。
結果として僕はどっちもラッパーも凄く好きになったBEEFでした。


◎アイドルがヒップホップのBeefに参戦?!

このBEEFの発端は2012年にRAU DEFという若手のラッパーが、大御所ZEEBRAへのディス曲を発表することから始まります。
RAU DEF / KELLIN EM!


このトピック第一のBEEF。
RAU DEF vs ZEEBRA
の始まりです。

そもそもなんでRAU DEFはZEEBRAをディスったの?って思いますが、おそらくそんなに恨み辛みはなかったと思います。
若手のラッパーが自らのプロモーションの為に、自分より有名なラッパーにBEEFを仕掛けるということは多々あることで、それこそディス文化の面白みです。
しかしデビューして間もないRAU DEFが大大御所のZEEBRAにBEEFを仕掛けたのは、あまりにも唐突で、その衝撃は大きな話題になりました。

RAU DEFもフレッシュな感性と若手随一の実力派ラップで注目されましたが、ZEEBRAも直ぐさまアンサーを返し大御所の余裕をみせます。
ZEEBRA / Die by the Beef


その後もう一度RAU DEFはZEEBRAにディス曲を書きましたが、ZEEBRAからの再アンサーはありませんでした。
RAU DEF / Trap Or Die


これは個人的な見解ですが、ZEEBRAのアンサー曲中の、
「Beefに生きる者は、Beefに死す」
というラインは、RAU DEFへのアンサーである同時に、過去の自分に向けたメッセージでもあったんじゃないかなと思いました。
過去キングギドラで出した『公開処刑』のその圧倒的な破壊力は、その後、良くも悪くもZEEBRAというアーティストのパブリックイメージを形成する大きなファクターの一つになったからです。


そしてこのラッパーvsラッパーのBEEFは思わぬ所に飛び火します。

その名もズバリ、DiS、という女の子二人組のラップユニットがこのRAU DEFにBEEFを仕掛けて来たのです。
DiS / DEAR BEEF


これがこのトピック第二のBEEF。
DiS vs RAU DEF
です。

某BiSというアイドルのメンバーに酷似していましたが、本人達曰く、DiSは別人ということ。。。

ちなみにこのMVはどうみても先に紹介したSEEDA&OKIのMVのパロディーで、当時めっちゃ笑ったのを覚えてます。

そしてRAU DEFはしっかりDiSにアンサー。
RAU DEF / Put it in your mouth


DiSも再ディス。
DiS / GAKKARI BEEF


しかしその後の展開はありませんでした。

アイドルvsラッパーのBEEFって多分世界的観てもこれだけなんじゃないかな、と思います。
凄い。。。


◎まさかのアンサー「ごめんな」。

次に紹介するBEEFは割と最近。
1年ほど前に起こったものです。

まだ十代のdodoというラッパーがサイプレス上野へのディス曲をYouTubeにアップ。
dodo vs サイプレス上野
のBEEFが始まります。
dodo / サ上死ね


これもダイレクトに攻撃的なタイトルと、十代という若さが注目が集め、大きな反響を呼びます。

それに対しサイプレス上野が翌日アンサーソングをアップ。
サイプレス上野 / サ上、死んだってよ。


僕はこれを聴いた時、サイプレス上野のラップの内容に、度肝をぬかれました。
「ディスられてディスり返す」のではなく、まさかの「ごめんな」。
一応「一体どこのdodo?」というラインで先輩としての威厳は守りながら、要約すると「ごめんな」という内容の謝りラップは凄く斬新でした。

“日本人の国民性では、BEEFという文化はエンターテイメントとしてマジョリティーに受け入れられない。”.

これが一つ、verbalがSEEDAをポッドキャストに呼んだ時の考え方だった様に思えたけど、このサイプレス上野のアンサーは至極日本人的で、ヒップホップ発展の新しい突破口の様で、非常に興味深い曲でした。
一方のdodoも十代でBEEFを仕掛ける度胸が魅力的でした。


◎芸人vs芸人!

それでもまだおっかない!というアナタに教えたいBEEFが最近起こりました。

それが、
オードリー若林vsオードリー春日
です。

え!オードリーってあのオードリー?!
そうです。これは国民的お笑いコンビ、オードリーが彼らの冠ラジオ番組内で起こしたBEEFです。

まずオードリー若林がラジオ番組内で、元ラッパー芸人ゴンゴール氏原と共作で作った春日へのdis曲を流します。


まず驚きなのが、めっちゃラップ上手いこと。
笑えるほどヒップホップ文化に忠実です。
ラジオの他の回を聴くと、オードリー若林さん結構ヒップホップがお好きな様ですね。

そして対する春日もしっかりアンサーソングを制作!


おおお、若林ほど上手くはないけど、しっかりアンサーしてる!
途中若林のモノマネもめっちゃ似てて、ネタとしても笑えます。

そして最後、若林が持って来た曲が、まさかの春日へのLOVEソングで、感動のフィナーレ。


なんだこれ、普通にカッコいい曲じゃないか!!
泣けるわ!!!

これ芸人が所謂ネタとしてヒップホップの真似事をしている様に見えて、違うと思います。
これはまさにBEEFそのもの。
春日のアンサーの回にいたっては、ライミングの話やパンチライン(インパクトのあるフレーズ)の話まで及んでいて、BEEFの本質を捉え過ぎています。

ラッパーvsラッパーのBEEFに抵抗がある人でも、これなら笑いながら聴けるんじゃないかなぁ。


◎追悼、Dev Large。

そして時代が前後しますが、こんな風にYouTubeなどのインターネットを使い、日本で初めてリアルタイムでディスやアンサーの攻防を楽しめる様になったBEEFがあります。
ヒップホップファンにとってはあまりにも有名なBEEF。
それが、
Dev Large vs K DUB SHINE、です。

日本のヒップホップ界の先駆者であるBUDDHA BRANDのDev Largeと、同じく先駆者であるキングギドラのK DUB SHINEのBEEF。

Dev Large / ULTIMATE LOVE SONG


K DUB SHINE / 1 THREE SOME


Dev Large / 前略ケイダブ様


インターネットを使ったリアルタイムなBEEFと、パイオニアvsパイオニアという構図は、当時のヒップホップシーンには衝撃的でした。
また黒船的バイリンガルラップのDev Largeと、日本語ライミングの基本を確立したK DUB SHINEのスタイルウォーズはリスナーにとっても非常に贅沢なBEEFだったと言っても良いと思います。


そしてこのBEEFを最後に書いた理由があります。
実はこのDev Largeさんというラッパーが先日、2015年5月4日にお亡くなりになりました。
享年45歳、あまりにも早すぎる死でした。

日本のヒップホップシーンの最重要アーティストの一人であり、個人的にも青春時代からずっと愛聴していた大好きなラッパーでした。
残念でなりません。


このBEEFの後日談として、偶然街で再会したDev LargeとK DUB SHINEが和解したというエピソードがあります(詳しくはRhymester宇多丸さんがラジオ番組で語った内容の記事があるので参照してみて下さい
コチラ

K DUB SHINEさんもDev Largeさんの訃報に追悼コメントを記しています。

「長年の友人であり、ライバルでもあり、同志でもあった世界に誇る日本のヒップホッパー、デブラージが昨日早朝天に召された。容体が良くないのは聞いてたが奇跡が起こるのを信じていた。残念すぎる。早すぎる。音楽界にとってもとてつもなく大きな損失だ。」
K DUB SHINE

BEEFはそれ自体エンターテイメントであるけど、時にそれ以上に人間と人間のリアルなドラマを僕達にみせてくれるものなのかもしれません。

R.I.P Dev Large.
御冥福をお祈りします。



さて、森心言コリショー!!!!のBEEF特集は以上です。
皆さん、どうでしたか?

少しでもこのカルチャーの面白さが伝われば嬉しいです。
そしてまた新しいBEEFが起こった時は「あーでもないこーでもない」とみんなと意見を交わして楽しみたいです!


結論 。

俺はBEEFとかに巻き込まれたくねー!!!


◎追記◎
さて、もう一ヶ月以上が経ってしまいましたが、4月のAlaska Jam企画『シュッシュルパーティー!!!!』にお越し頂いた皆さん。
改めて、本当にありがとうございました!!!

去年の初ワンマンライブは正直緊張でガチガチだったりして(もちろんそれも含めて最高の思い出になのですが!)、、、笑

でも先月のAlaska Jamのライブはとにかく楽しもうって気持ちが大きくて、結果物凄く楽しかったです。

それは競演のバンドのみんなの愛あるステージと、何より来てくれた皆さんのお陰だと思います。
本当に、本当ありがとう。

またAlaska Jamは7/5に代々木公園にてライブがあり、8/19には自主企画も決まっています!
今から楽しみで仕方ありません。
みんな絶対来て欲しい!
最高の夏にしましょう!!!

それではまた!!!!!

森 心言


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  • 森心言(Alaska Jam)
  • http://www.alaskajam.jp/