-対談- 白水悠(KAGERO / I love you Orchestra)×濱田秀一郎(絶叫する60度) 前編

Posted on 2017.06.30

Category: INTERVIEW




I love you Orchestraと絶叫する60度のコラボ・アルバム『剥』が2017年7月5日にリリースされる。
常識破りのバンド編成と轟音で痛快な活動を続けるI love you Orchestraと、車で寝泊まりしながら全国各地で年間300本のライヴを行う2人組ガールズ・ロック・ユニット『絶叫する60度』。
便宜上、「インストバンド」「アイドル」と称されることはあっても、実際は“どこにも属していない”2組は、なぜシリーズ・イベント「Dockin’ On Heaven’s Door」を行い、ツアーをまわり、ついにはアルバムを創るまでに至ったのか?
KAGERO / I love you Orchestraのリーダー・白水悠と絶叫する60度のプロデューサー、濱田秀一郎の対談を前編・後編にわたってお届けする。

取材・文:岡本貴之

―今日は、「なぜI love you Orchestraと絶叫する60度がコラボ・アルバムを出すのか?」をテーマとしてお2人にお越し頂いたんですけど、普段から飲んで話したりしてるんですか?

濱田:いやいや、そこまでは。たまにですね。

白水:まぁほんとちょいちょい、何か用事があることにかこつけて(笑)。

濱田:なんせ、うちが年間とてつもない本数のライヴをやってるので。

白水:いま年間何本くらいやってるんでしたっけ?

濱田:300本です、だいたい。

白水:はあ~(笑)。濱田さん、全然東京にいないですもんね。

濱田:このインタビューが終わったら明日ライヴなんですけど、それが終わったらまた12日間出っぱなしで、日々車で寝る生活が始まるんですけど。

白水:家賃がもったいないわ(笑)。

―そもそもの出会いってどんなきっかけで?

白水:最初は2015年の大塚Hearts+で、伊藤ちゃん(ブッキング担当の伊藤大輔氏)のイベントに出たとき(2015年10月14日に行われたイベント)かな。I love you Orchestra(以下・ilyo)はまだ2ndアルバム『Fuse』を出してマレーシアに行って帰って来たくらいの頃で。最初は伊藤ちゃんから「アイドルとやってみない?」っていう話があって。僕はアイドルっていうものの文化も知らないし、たまにKAGEROでフェスとかで一緒になったりしてそのハンパない盛り上がり具合とか見ていたぐらいの感じだったんだけど。まあでも変な話、ilyoだからね、「別にいいよやってみようか」みたいなノリになれたというか。今でこそアイドルさんとバンドの関係性ってその時とはまた変わってきてると思うんだけど、2年前を考えると、かなり怖いもの見たさみたいなものもあって、そういう刺激はilyoにはちょうど良いかなって。あのときはアイドルさん3つバンド3つみたいな感じでしたっけ?

濱田:そうですね。絶叫する60度(以下・絶叫)側からの視点で言うと、伊藤ちゃんからすごく恐る恐る「すごく面白いバンドがいるんですけど、どうですか?」って言われて。

白水:ははははは!

濱田:そのときの伊藤ちゃんが、ilyoのことはよくわかっているんですけど、絶叫のことはあんまりよくわかってなかったと思うんですよね。(大塚ハーツ+には)ちょくちょく出てはいたんですけど。

白水:絶対そうですよね。

濱田:今でもそうですけど、すごく勘違いされるのが、僕らアイドルって言われるのは良いんですけど、アイドルイベントにはあんまり出てないんですね。今月も26本のライヴ中、アイドルイベントって1本だけなんですよ。そういう状態で、「アイドルとしてどうですか」って言われたときに、ilyoサイドと同じように、アイドルと一緒にやることに対して僕らも「大丈夫かなぁ?」ってなってたんですよ、気持ち的には(笑)。僕らはクオリティはまだまだアイドルだと思っているんですけど、マインドだとか目指すものがアイドルではなかったので。バンドとアイドルのミックスのイベントで、他のアイドルと一緒に並べられてアイドルサイドに入れられることはよくあるんですけど、そうするとお客さんのノリも含めて違うんだけど大丈夫なのかなっていうこともあって(笑)。でもあのイベントのときは「べつにいいですよ」っていうノリで受けて。たぶん、お互いそんなに意識はしてなかったですよね。

白水:1回目は、もちろんやる前にはお互い全然知らないし。

濱田:楽屋でもそんなに交わってないですよね。僕からすると、「ずっとギター触ってる変な人がいるなあ」っていう感じで。

白水:それはうちのジム(中平Jim智也)だね(笑)。

濱田:気持ち悪いですよね、楽屋でみんなが喋っているときにず~っとギター弾いているって(笑)。そのときケンローさんも一緒になってお互い喋るわけでもなくず~っと弾いていて。そういう人もいれば、この人(白水)はあっちフラフラこっちフラフラしていて。「なんだこのバンド?」と思って。KAGEROとilyoの関係も全然わかってなかったので。ただ、ライヴを観たときに「やべえ、なんだこのバンド!?」って個人的に思ったんですよ。それとうちの魁(kai)がバンド好きなので、「わあ、楽しい!」ってなっていて。でもそのときはそれくらいだったんですよ。

白水:そうですよね、そのときは終わってから一言二言、「よかったですよー」くらいの感じでしたもんね。

濱田:ただそこでなぜか、お客さんが混ざったんですよね。うちのお客さんがilyoでめっちゃテンション上がってて。それを見ていた伊藤ちゃんがまた勘違いして(笑)「シリーズ化しましょうよ」って勝手に盛り上がり始めて。

白水:シリーズ化するなら、ちゃんとタイトルも付けたいなと思って、「Dockin’ On Heaven’s Door」っていうタイトルをつけて。確か1回目のときからもうコラボはしてたんですよ。そのときは絶叫だけじゃなくて偶ドロ(偶想Drop)も2&もilyoがバックをやって、3組全部のアイドルとコラボしたんだけど。そのへんで僕、少し世界観が変わったんだよね。終わってからえっふー(絶叫する60度ファンの総称)たちがハーツの上にある居酒屋の「一休」で飲んでて、濱田さんとかメンバーもいるっていうから、「ちょっと顔出していく?」って僕と伊藤ちゃんと前ちゃん(ilyoのドラマー・前川和彦)で行って、そのとき初めてアイドルのお客さんと話をしたんですよ。そこで喋ったときに、「アイドルのお客さんってこういう感じかな」っていう勝手な固定概念と全然違っていて。「前までバンドやってたんですよー」とか、好きな音楽の話を聞いたときに「ああ、こういう人たちなんだ」っていうことを知って、そこから意識が変わったかな。「本来こういう人たちに届けたかったよな」っていう感覚もあったんですよね。

濱田:打てば響く人たちですからね。

白水:そうそう。いっぱい音楽を聴いてる同性で、ちゃんと自分たちで音楽の乗り方を編み出している人たちというか。

濱田:僕もその頃にはまだ理論的にはわかってなかったんですけど、じつはうちのお客さんって、アイドルのお客さんとは言い切れない人たちで。正直それで、みんな勘違いするんですよ。「アイドルってこんな感じなんだ?」って。それで他のアイドルとやって、見事に打ち砕かれるという(笑)。

白水:だから一個だけ伊藤ちゃんを恨むとすれば、「アイドルとやらない?」って言われて一緒にやった人たちが、今思えば全然「アイドル」じゃなかった(笑)。「絶叫」だったっていう事が最近わかった。



LIVE PHOTO by Kana Tarumi


濱田:だから僕らも数ヶ月前に某アイドルさんから、「解散するんですけど、絶叫さんとやるのが夢だったので、最後にやってくれませんか」って言われて。思いが熱かったので、たまには行ってみるかって秋葉原に行ったんですけど、「アイドルのお客さんってこんな感じだったっけ!?」って。

白水:ははははは!

濱田:今うちがほとんどバンドイベントに出て違和感なくやれているのは、うちのファンがちゃんと音楽を知っていたり楽しんでいる集団だからなのかなと。これは本当に最近わかってきたことなんですけど、僕らの世代の人たちってちゃんと音楽を聴いているんですよね。楽器経験者も多くて若い頃はパンクでした、メタラーでしたっていう人がたくさんいるんですけど、逆に今の若い人たちってそこまで音楽に依存していない人が多いので、僕からすると今のバンドが持っているお客さんって、音楽好きというより「お祭り好き」な人が多いなって思っているんです。フェスは楽しいし行くけど、ワンマンツアーがあっても行かないっていう人たちが多くて。うちのお客さんっていうのは音楽が好きでライヴが好きでライヴハウスが好きで、良いバンドが出てきたらめちゃくちゃ楽しんでいて。昨日はザ・マスミサイルと2マンだったんですけど、泣いているお客さんもいましたからね。そういう感情を露わにする人たちが好きでずっとやってきた。これは魁が言ってたんですけど、「ilyoは楽器が歌ってる」って言うんです。それはお客さんも同じで、歌がないのなんてどうでも良くて、ilyoからはパッションを感じるから楽しいんですよね。他のインストバンドとやったことも何度かあるんですけど、うちのファンに刺さらなかった。インストバンドは本来、こうやって(腕を組んで)じっくり聴くものだと思ってたんですけど、ところがilyoはそういう概念をまるで持ってないんですよね。

白水:まあ僕自身が歌を歌えたらたぶん本来歌ってたんだろうなーって感覚なんですよね。だから、絶叫がアイドルと違ったというのと同じで、うちもあんまりインストバンドじゃなかったっていう。

濱田:よくこういうインタビューで、ジャンルの話になるんですけど、なんて言っていいかわからないんですよ。「アイドルですか?」って言われたら「アイドルです」って答えるし、「絶叫はバンドですよね」って言われたら「バンドです」っていうし(笑)。ilyoに関しては、インストバンドで音を売りにしているはずなのに、途中で楽器やらない奴がいるし、飛んじゃう奴がいるし、「なんだこれは!?」って(笑)。「ilyoはインストバンドですか?」って言われるとどうなんだろうって。

白水:まあ、「インストバンドですね」って言われたら「はい」って言いますし、「インストバンドじゃないですね」って言われても「はい、そうすね」って言いますね(笑)。

濱田:ilyoと出会って2年で、その後も色んなバンドと出会って好きなバンドはたくさんいるんですけど、「頭の中も一緒だな」っていうのは、後にも先にもilyoだけなんですよ。僕がこのまま死ぬまで音楽をやるとしたら、死ぬまで一緒にやれそうな人っていうのは、白水君しかいなかったんですよね。今でもそう思っています。たぶんこの人、音楽やめたら死ぬんだろうなっていう。

―やってる音楽は違えど、お互いに表現したいことは同じということですかね。

白水:近いものはあるんじゃないですかね。それはこの前ツアー(ドキノンツアーの一巡目)をまわっていても思ったし。ただ、濱田さんはずるいなって思うのは、自分がステージに上がらないから、魁ともんてろをカッコよくすれば良いっていうのは、良いなって思いますね。「自分を売るってダセえな」って最近思ってきて(笑)。

一同:爆笑

濱田:僕が思うに、白水君はプロデューサー的な一面も持ってるんですよ。自分をアピールしている反面、自分を客観視もしている人だなって思うんですよね。自分のことはすげえ適当で、すげえ自由で、そのくせちょっと繊細でっていうすごくややこしい人間なんですけど。

白水:ははははは。

濱田:それがものごとを客観的に見たときに、これが面白いかどうか、やりたいかどうか、やったらどうなるかをすごく深く考えていると思うんですよね。僕も中学生の頃からバンドをやっていて、ずっとドラマーでバンマスだったんです。後ろからバンドを客観視してた。だから今も基本的に気持ちは変わらないんですよ。Twitterにもそう書いているんですけど、僕は「絶叫する60度のトーク&フロア担当です」って言っていて。僕もプロデューサーって言われてもピンとこなくて、メンバーだと思っているんです。もともとドラマーなんで、バンマスとして後ろで叩いているときって、正直今とあんまり変わらないんですよ。目立たないじゃないですか?どんだけ自分がアピールしたくても。正直そのバンドの良し悪しにはあんまり影響していないという自覚がずっとあって。今はSNSもあって自分の意見も前に出せる分、自分の現役時代以上にメンバーとして稼働できている気がして。だからメンバーに対して上からいくことは絶対ないんですよ。「俺たちは対等だ」って言っていて。僕の方が経験はしているから経験の話はするけど、売れずに今ここにいるわけだから僕は負け犬だ、と。でもお前たちはこれからだから、もしかしたらお前たちの方が上かもしれないし、お前たちの方が正しいかもしれないから、そこは対等で行こうって。

白水:レコーディングの現場でもライヴの楽屋でも、絶叫は3人で対等に喧嘩してますからね(笑)。「今から俺らステージに出るんだからやめてくれよ!」って思うもん(笑)。

濱田:対等じゃなかったら、上からの暴力じゃないですか?でも対等だからあっちも本気で叩いてくるから、ただの喧嘩(笑)。でもさっき白水君が言っていた意味がわかるんですよね。自分のことになると、ちょっとだけお人好しになっちゃう。この世界って、「自分が一番・俺様」っていう人はセルフ・プロデュースしやすいんですけど、ちょっと控えめだったりするとなかなか前に出づらいじゃないですか?そういうときに人を使ってやるんだったら、思ったことをガン!ってできるんですよ。

白水:そう。だから、前ちゃんとかジムとかメンバーに「いっちゃえいっちゃえー!」みたいなのはすごく出来るんですよ。でも、あんまり自分は客席に飛んだりしないもんね。「まあ、別に僕はいいか」みたいな(笑)。

濱田:ははははは。

―そのへんが、お2人が共通している部分なんですね。

濱田:共通してますね。もともとはプロデューサー体質なんだろうなっていうのは思います。もう1つの共通点としては、本当に腹の底から「人と同じことをしたくない」っていう。

白水:ああ~そうねえ。でもまあ本当はそんなに意識的に変なことをしたいわけじゃないんですけどね。誰かがやったことでも別にいいっちゃいいんだけど、その段階でサムイなって思っちゃうことも多くて。それは音楽だけじゃなくても。

濱田:答えが見えちゃうのが嫌なんですよね。僕は数学がすごく嫌いなんですよ。答えを合わせにいくのが嫌いで。国語とか歴史が好きなんですけど、それって答えがないじゃないですか?特に歴史って過去だから絶対的な答えが見つからない可能性があって。



―「じゃあお前は見たのか?」って話ですもんね。

濱田:そうそう(笑)。そういうのにすごくロマンを感じるんですよね。絶叫は今、年間300日くらいライヴをやってますけど、みんなに言われるのが「そんなことやってたら絶対喉を潰す」とかなんです。だとしたら、本当に潰れるのかやってみなきゃわかんねえだろって思っちゃうんですよ。ただ変なことをやりたくてやってるわけじゃなくて、楽しそうで答えがないことをやろうとしたら、自ずと普通の人と違うことになってるんです。答えがあると楽しくないんですよ。

白水:作業みたいになって、つまんなくなっちゃうんですよね。最近はKAGEROもそれは近いところがあって。例えば、CDを出してツアーまわって、デカいところで頑張ってワンマンやって、それでその次はフェスに出させてもらって、もっとでかいとこでライヴをやって、というのが多分いまの王道のやり方で、それでみんな頑張ってると思うんですけど、そのやり方で身を削ってくんだったら、僕よりも上手くやれる人はもっといると思うんですよ。もっと社会に適合した人で、色んな人に愛想を振りまける人がやった方が絶対上手くいくだろうし(笑)。それに、もうKAGEROでもilyoでもそういうことはたくさんやってきたし。やった甲斐はあったし、後悔は何もないし、だからこそ今の立ち位置で生きていられるんだと思うんだけど、この先もそれをやり続けて行くのが良いのかって考えたときに、それよりも今の慣習に則らなくても、僕にとっての楽しいものってたくさんあるなって。そもそも他人に「あいつ頑張ってるな」って思われた時点で負けだと思ってて(笑)。

濱田:そうそう。よくそれを言われるじゃないですか?「ライブたくさん頑張ってますね!」って言われると、「いや、楽しいからライブ増えちゃっただけなんだけど…」って思う。

白水:もちろん、頑張ってるときもあるのかもしれないけど、それはもっと内面的な話であって。

濱田:白水君と話していて、本当に腹の底から似てるなって思ったのが、たぶん外部と全く戦わないんですよ。常に自分と戦ってるんです。

白水:あー、もう最近なんか外部と戦うの嫌なんすよー(笑)。

濱田:自分との戦いほど楽しいものはなくて。だから、人の意見も全く気にならないし、それで「えっ!?」って言われることもあるんですけど。例えば、大きなフェスに誘われても断っちゃったり、メジャーとかの話も楽しくなさそうだから断っちゃったり。そんなことよりも、1日でも多く楽しくライヴをやりたくて。「ライヴハウスで会いましょう」って。僕はCDが売れるっていうことにあんまり興味がないんですよ。ディスクユニオンの方がいる前でなんですけど(笑)。絶叫の魅力は盤からじゃなかなか伝わらないので。そこで良い曲だねって評価されてもあの2人のライヴが評価されている気がしないのでしっくりこないんですよ。だから本来のライブが出来ないインストアライブも嫌いなんですけど前回のシングルはヴィレッジヴァンガード限定でやったんです。嫌いなのに何故やったかっていうと、ヴィレッジヴァンガードさんが愛情たっぷりに「絶叫さんのCDを置きたいです」って言ってくれたからというだけで。

白水:なんせよ愛がないのは嫌ですよね。

濱田:こんなこと言ってるからいつまで経っても金が貯まらないんですけど(笑)。でも僕らは楽しいと思うことをやるために、ある意味普通の人のレールから外れてこの世界にやってきたわけで、この世界に来てまで社会の秩序とかサラリーマン的な序列の中でやるんだったら、この世界にいる意味がないなって思うんですよ。

白水:ああー、本当そう。本当そうだわ。お金欲しいんだったとかマジで真っ当なお仕事を真剣にやりますよ。

濱田:僕は実際に自分で会社やってて結構な報酬をもらっていた時代もあって。金を持つところまで持った結果、「金ってなんにも楽しくねえな」ってなったんですよ。本当にビックリするくらい金は持ってる時がありました。毎月高級車が買えるくらいの。

白水:ええー!?2年だけそこに戻ろうよ、みんなで(笑)。

濱田:いやホント、あんときの金を今くれって思いますけど(笑)。そのとき、モータースポーツの世界に関わってみたり、部下が会社やりたいって言ったら2千万くらい出して会社作っちゃったり。でも何にも楽しくなかったんですよ。それで毎日悶々としてたときに、音楽業界に戻るきっかけがあって。そしてあの2人に出会った。あと今回のアルバムの話に関して、僕のメンタルが一番わかりやすいことを1つ言うと、これは白水君にも初めて言うことなんですけど…

白水:はい、なんでしょう。

濱田:うちは3年やってるんですけど、アルバムは1枚も出してないんです。未発表曲も合わせると30曲近くあるのに「何で出さないの?」って言われ続けていて。でもたぶんこの後、絶叫の「オリジナルアルバム」を出しても、僕は全然オリジナルだって思えないと思うんです。お客さんはたぶん欲しいとアイテムだと思うんですけどね。現時点で僕はこの『剥』が一番絶叫のアルバムだと思っているんです。ilyoからするとコラボ・アルバムかもしれないけど、僕らにとっては、このアルバムこそが絶叫する60度なんです。今回は自分たちが歌詞を書いているんですけど、好きなアーティストの曲に乗せて、自分たちの想いを全部そのまま何も介さず吐き出した。これまでの曲は与えられたものだったり、借り物も多かった。もちろん共鳴出来る曲だからこそ歌ってきたわけなんですが、メッセージを一番大事にしている絶叫にとっては今までのどの曲よりもこのアルバムの曲が自分たちを直球で表現出来ているのは当然で。「オリジナル・アルバムはどれですか?」って訊かれたら、僕はたぶん『剥』だって答えます。

白水:これはアレだね、後で缶ビール奢らなきゃいけないやつだ(笑)。いや、でも嬉しいです。本当に。

濱田:僕は2人にも「これが一番、絶叫する60度だと思ってる」って言っているんです。今まで軸にしてきたわかりやすいメタル調パンクだったり、ボカロロックだったりというのは、絶対にあの2人のアイデンティティにはなり得ない。それをやるなら他にも凄いボーカリストはいるので。あの2人はそれを無理して頑張って歌ってるんです。だから今回のこのアルバムに関しては、あの2人の声やスタイルが一番生きる曲ってなんだろうって考えていて。考えた結果が歌謡曲だったんですね。聴いて頂いたらわかると思うんですけど、ilyoの轟音の中で、サビのメロディとかめちゃめちゃ哀愁漂う歌謡曲になってます。もらった楽曲をそのまま活かしつつ。ただ、1つ間違えてギター・ソロをサビだと思って歌詞付けちゃったんですけど(笑)。

一同:爆笑

濱田:「これ良いメロだなあ~」って。

白水:それは1曲目の「弱虫の唄」なんだけど、ギター・ソロっていうか、最初にギターでサビのメロを弾いてからAメロに入ろうって創ってて、んでレコーディングに入ったら2人が歌い出してて(笑)。「うそ、ここ歌うの!?」って。

濱田:そこがめちゃくちゃ良いメロに聴こえたんです。僕は本当にilyoの楽曲が好きで、その一番好きなものに直接自分たちの思いを込めました。今までの楽曲の作り方は、僕の思いや考えを汲み取った作家さんにそれを出してもらうことが多かったんです。僕は他のアーティストには詞の提供をいっぱいしているんですけど、なぜか絶叫に関しては1曲も僕が書いた歌詞はないという。

―今回のアルバムは、濱田さんが作詞をしているんですか?

濱田:今回は、全部僕が書いた曲が2曲あるんですけど、あとは魁ともんてろにベースを出させてます。魁は歌詞を出してきているんですけど、もんてろに関しては短い文章や単語を出してきた感じです。ときどき、もう歌詞とも思えない想いを書いた短いものがたくさん出てきたんですけど、その中から魁が3曲、もんてろが1曲入っている感じです。でも魁の詞は出口がないんですよ。闇だけ吐き出しても、聴く人は気分悪いじゃないですか?

白水:ははははは、確かに。

濱田:彼女自身が出口のない中で悶々としているので、僕が歌詞の中で彼女に対して答えを出して「こういう出口にしたんだけど、どう?」って見せて「ああー!そうなんです!」ってなった歌詞だけを採用している感じです。僕は出口がなくて悩んでいる若い奴に歌詞で会話をして「言いたかったことはこういうことじゃないの?」って提案している感じなんですけど、今回は結構、魁は闇の部分を全力でさらけ出しているので、僕もやりがいがありました。

もんてろに関しては、それが良いのか悪いのかわからないですけど、何か別のものに例えて自分の思いを伝えるというやり方ですね。比喩。よくある作詞の方法ではあるんですけど、僕の求めるやり方ではないんです。アルバムタイトルにあるように、ダイレクトに感情を剥き出しにするというコンセプトで言うと、まだ剥き出せてはいない。

白水:でも良く出来てますよね、もんてろが書いた「8522の夢」は。未だにちょっと泣けますもん。

濱田:そうですね。自分の思いを比喩で表現するっていう作詞法は悪いことではないんですけど。自分ではない何かに例えてストーリーを展開する。でも僕の性根がパンクなので。遠回しなものよりも「好きなら“好き”って言えばいいじゃん」っていうタイプで。僕らはライヴ1発勝負なので、1発で刺さらないならチャンスはないと思っていて。考えて考えて「ああ~そういう意味か」ってなってたら、ライヴバンドとしては厳しいだろうなって。だから歌うときも歌詞が聴こえるように歌えっていうのを徹底しているんですけど。


>後編を読む
~後編では、完成するまでの経緯も含めより詳しくアルバム『剥』に迫ります。


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