-対談- 白水悠(KAGERO / I love you Orchestra)×濱田秀一郎(絶叫する60度) 後編

Posted on 2017.07.06

Category: INTERVIEW




I love you Orchestraと絶叫する60度のコラボ・アルバム『剥』が2017年7月5日にリリースされる。常識破りのバンド編成と轟音で痛快な活動を続けるI love you Orchestraと、車で寝泊まりしながら全国各地で年間300本のライヴを行う2人組ガールズ・ロック・ユニット『絶叫する60度』。
便宜上、「インストバンド」「アイドル」と称されることはあっても、実際は“どこにも属していない”2組は、なぜシリーズ・イベント「Dockin’ On Heaven’s Door」を行い、ツアーをまわり、ついにはアルバムを創るまでに至ったのか?
「頭の中が一緒」だという2人、白水悠(I love you Orchestra)×濱田秀一郎(絶叫する60度プロデューサー)の対談後編では、アルバム『剥』の楽曲について、それぞれから見たI love you Orchestra、絶叫する60度のメンバーについて語ってもらった。

取材・文:岡本貴之

>前編を読む



―ライヴを通して共感を深めたI love you Orchestra(以下・ilyo)と絶叫する60度(以下・絶叫)がアルバムを創ろうという発想に向かったのはいつくらいからなんですか。

濱田:たぶん、本格的になったのは、初めて2人きりで飲んでからだと思います。ライヴハウスで飲んでいた延長で、お互いが思っていることをただただ喋ってたんですけど、それがことごとく自分が考えていることと同じことで。

白水:僕がいつも他人にしてる話を、濱田さんが僕にしてきたんだよね(笑)。

濱田:本当にそんな感じなんですよね。そのとき白水君にも言ったと思うんですけど、「僕はこんだけ生きてきて、初めて“自分と全く一緒だ”って思える人間に出会いました」って。たぶん、脳みその99%が同じなんじゃないかっていう感じで。ハチャメチャだって周りから言われて、でも実は自分の中では「あれ?おかしいのかな?」って思っていることを、真顔で僕に言ってくる人だったんで。

白水:ハチャメチャだって自分で思ったこと、僕は一回もなくて。

濱田:僕もあまりないんです。

白水:さっきも言ったけど、変わったことをしたいんじゃなくて、なんていうか色々と「誠実」にやってたらこうなっちゃっただけだから。

濱田:ツアーでも、距離とか関係なく「好きだから来てください」って言われたらそりゃあ行っちゃいますよね。でもみんなからすると、「なんでもっと効率よく回らないんですか?」とか言われるんですけど。

白水:まぁ今回のツアーの回り方も傍から見たら意味わかんないですよね。

濱田:今回、最初に高松、福岡、松江って回るんですけど、1移動平均600キロくらいあるんです。でもそれを白水君に言ったときに、即答で「OK」って言うんですよね。楽しそうだと思ったらOKっていうところが一緒だなと思って。でも後で困るんですけどね。この前も島根から秋田に移動したんですけど、あんなに遠いとは(笑)

白水:普通そんなん車で移動しないですよ(笑)。

濱田:1345キロを18時間かけて移動しました。一日の移動距離じゃねえだろって(笑)。

白水:すげえなあ(笑)。

濱田:話を戻すと、きっかけとしては初めて2人で飲んだ日だと思ってます。「この人となら絶対面白いことが一緒にできるな」っていうのを心のどこかに思っていた感じですね。うちもilyoもそうだと思うんですけど、完全に独断なんですよね。進め方としては。

白水:ああ、まぁそうですね。

濱田:決める時は独断ですけどうちは普段から色々メンバーと話して感触は掴んでいるので強制されているとは思ってないはずです。

白水:みんなで話し合って決めてきた話よりも、僕が勝手に決めてきた話の方が絶対面白いことになるでしょっていう自信があるからねぇ。

濱田:そうそう。うちのメンバーも1300キロ移動したところで、「えぇ~!?」とか言わないですもんね。むしろ明日のライヴがどこなのかもあんまりわかっていない感じで(笑)。そこも一緒ですよね。

―そのときに話したことがこのアルバムに直結している感じなんですね。

白水:でもその時正直何を話しのか僕は全然覚えてないんだけどね。べろんべろんだったから(笑)。

濱田:「一緒にアルバム出したら面白くない?」みたいなことを言われて、じゃあどうするかって考えたときに、とりあえず歌詞はこっち、曲はilyoっていう話をして。そこからすぐでしたね。曲が出来て、こっちも歌詞を書いていて、あとははめるだけっていう。だかど、そこからが大変でしたけど。「これ何拍子だろう?」みたいな。

白水:ははははは!

―アルバムを聴いて思ったんですけど、どちらも普段やっていることと変わってないのに、1つになっているというか。どちらかに寄せてないですよね。

白水:ああ~なるほどね。

濱田:全く寄せる気はなかったですね。

白水:今回、僕がメインで書いた曲が「I love me.」と「天志音」(読み:テンション)なんだけど、「天志音」はたしかアルバムの中で最後に書いたのかな?ケンちゃんとかジムが他の曲のたたき台を作ってきたときに、彼らはもうちょっとアイドルさんっぽい歌モノに寄せるのかなって思ったんですよ。そしたら結構ハードなものを書いてきたんですよね。で、ベタにメタルなノリでヘドバンするような曲とか書いてくるのかなって思ってたら、全然そんなこともなくて。じゃあもう、最後に踊りづらいハードコアな曲をぶち込んでやろうと思って。「天志音」なんてお客さん踊りずらいだろうし、テンポもクッソ速いし。

濱田:正直、この曲が来たときには「バカか?」と(笑)。今までたくさん歌詞を書いてきましたけど、こんなに苦労したことはなかったですね。この曲に関しては、ガイドのメロも来てないですからね。演奏だけ。「俺これとどうやって戦うの?」みたいな。最初に言われたのが「“アァー!”とか言ってたら楽しいでしょ?」って。“アァー!”ってなんだよって(笑)。

白水:いや、これはもんてろが叫べる曲かな~と思って(笑)。

濱田:どこがAメロでどこがサビとかいう曲じゃないので。曲先の時の僕の詞の作り方って、聴こえてきた音に対してそれが何を言ってるのかを何か聴こえてくるまでいったん掘っていくタイプなんですよ。詞は書き溜めているので、その聴こえてきた音にはめられる歌詞を持ってくるんです。そういう意味だと今回は、この長い移動の間、気が狂うんじゃないかっていうくらい車内でず~っと「天志音」を流し続けてたんだけど「まだ聴こえない、まだ聴こえない」って(笑)。本当に聴こえてこないんですよ。「何を言っているんだろうこれは?」っていうことをずっと考えていて。でも、今日初めて言いますけど、「天志音」は僕にとってものすごい大事な曲なんです。

白水:えっ、そうなんですか?

濱田:僕が昔、元メジャーの某プログレバンドに師匠に師事する形で在籍していたことがあって。僕の尊敬する人たちなんですけど。そのバンドが今のilyoと似た音や世界観だったんですよね。LIVEでキング・クリムゾンをアレンジして即興でやったり、ビートルズをプログレアレンジしたり。メンバーは皆50歳過ぎてて、その時僕はまだ20代前半だったんですけど、その中でドラマーとして鍛えられまして。持ち曲が曰く2000曲くらいあったんですけど、LIVEでそれを何の打ち合わせもなくノリでやる人たちで、突然始まる曲に合わせて自分も即興で何かしらの音を出さなきゃ相手にされないというとても刺激的な毎日でした。そのバンドの名前が、「天志音」なんです。

白水:ええー!知らなかった。

濱田:その人たちは、本当に“天を志す音”を追求していたおじさんたちだったなって思っているんですよ。今の僕の考え方の基にもなっているんですけど。売れることを目指すんじゃなくて、本当に音を追求して戦おうっていう。僕の師匠は、「本当にドラムが一番鳴る場所って知ってるか?」って、和歌山の新宮の山の中に僕を連れていって「ここいいだろ?」って言うような人で。

白水:狂ってるね(笑)。

濱田:そういう人たちなんですけど、僕が一番尊敬している人たちなんです。「天志音」はそのバンド名を拝借しました。メンバーは既に亡くなってしまった人もいるんですけど、その人たちに向けての僕の恩返しというかプレゼントが、ilyo×絶叫なんですよ。

白水:ヤバい、重い(笑)。

濱田:いや、全然重くないですよ(笑)。僕は“天を志す音”と書いて「天志音」という言葉がすごく好きで。白水君から曲が来たときに、あの野郎、絶叫とやるって言ってるのにこんな曲を書いてきやがって!って(笑)。まぁ嬉しかったんですけど。曲が天に向かって叫んでる。だからこの曲にはこのタイトルをつけようと思ったんです。この曲は僕の中で1つの区切りですね。

白水:うれしいなあ。でも今回、「I love me.」と「天志音」はわりとあっという間に書けましたね。ライブのイメージがしっかりできてたからかな。

濱田:「I love me.」は、確か詞も一番最初にできたと思います。

―「I love me.」は「天志音」とは対極な感じですね。歌詞はSNSで誰もが感じているようなことを歌っている印象です。

濱田:対極ですね。サビの部分は最初から歌詞が聴こえてきた感じです。Aメロは魁の歌詞なんですが「僕はいつもおびえている 誰かに心見られること」っていうところは、僕が付け足しました。それがないと、ただ自分が大好きで人の不幸を願っているだけの歌になっちゃうから(笑)。でもここもまた人間の本質で、人の失敗をほくそ笑んだり、自分だけ成功したいってどこかで思っているんだけど、そう思っちゃっている自分を軽蔑したり悪い人間だって悩んでいるというのも人間の本質だと思っていて。それを剥き出してきた魁の詞に対する僕のアンサーとして歌詞を足したんです。彼女はずっと悩んでいたと思うんですよ。「こういうことを思っちゃってる自分は絶対皆に軽蔑されるから隠さなきゃ」って。でも今回心を剥き出しにして僕に詞を出してきた。だから「大丈夫、誰もが大なり小なり思ってることだよ。でもお前、そういう自分が嫌いでしょ?」って歌詞で返したつもり。それを一言で表したのが、「大好きな自分が好きじゃない」っていう、一見矛盾した言葉なんですけど。

白水:なるほどね。

濱田:彼女に対して出した僕なりの答えですね。これが同じように悩んでる人に届いたら良いなって。恐らく、みんな“自分しか知らない自分”のことが結構嫌いなんですよ。僕もそうですし。

―濱田さんは、メンバーのお2人に対して年齢とか性別とか関係なく、内面に自分と同じものを持っていると感じているのでしょうか。

濱田:たぶん。僕は男とか女とか全く関係ないと思っちゃう人間で。だからこういう仕事もできていると思いますし、女でも殴り合いの喧嘩をするんですけど(笑)

白水:それはまた違う話な気がするけど(笑)。

濱田:「女の子だから」って言っちゃうことで、その時点で何かしらの差別意識や偏見を持ってるわけですよね。だから、あんまりそうは思わないですね。

Photo by Kana Tarumi

―ところで、ilyoと絶叫はお金的には儲かっているんですか?

白水:何をいきなり(笑)。でもilyoは入ってきた分、すごく使うんだよね。めちゃくちゃ使っちゃうんで、豪快に。

濱田:そうそう、思い出した。白水君とは一生やっていけるって心底思った理由のひとつは、音楽以外のことをせずに食えているっていうことですね。そこはすごく大事なことじゃないですか。

白水:まぁ少なくともマレーシア行こうが大型バスを貸し切ろうが何しようが、メンバーに実費切ってもらうようなことは絶対ないですね。それはありえない。

濱田:うちもそれでずっと回してきているので。あの2人と始めるときに、最初に話したのは、「俺とやるなら絶対に働くな」っていうことで。そのかわり、「半年間は俺が金を工面するから、その間に自分たちで食えるようになれ、それが出来なかったら解散だ」って言って始めたんですよ。そうしたら、3ヶ月くらいでクリアーしたんです。じゃあもうここからは、音楽のためだけに生きようって言って、今でもお小遣い制でやってるんですよ。本当にお父さんみたいな感じなんですけど。今日もここに来る途中で新宿に魁を車で送ってきたんですけど、「美容院行きたいなあ」ってずっと言ってるから「いくらだ?」って言って渡して。

白水:ははははは!お父さんだ。

濱田:それで何も文句を言ったりはしないですね。家族だと思っているので。お金のために活動しているわけではないですけど、生きていくためのお金は必要ですから渡しています。でももっと凄いのがうちのマネージャー。彼は高知県から出てきたので家を用意したんです。でもしばらくしたらその家を勝手に解約しちゃってて。どうしてかって訊いたら「あの2人が一生懸命頑張っているときに、まだ何も結果出していない自分が2人の稼いだ金を使うわけにはいかないですよ」って言うんです。そこまで含めて僕らファミリーなんですよ。

白水:あーもうバカしかいない、バカしか(笑)。

濱田:バカしかいないです(笑)。だから、そんじょそこらじゃ辞められないですよ。辞める理由がないんです。人生の退路を全員が絶ってしまっているので。お金のことで言うと、手段だから大事だとは思うんだけど、それが目的ではないので。

白水:自分にとって一番大切なのは音楽のこと諸々を考える時間で、ありがたいことにそこに割ける時間が年々増えているんですよね。だから今は生きててすごく良いサイクルの状態なんだけど、もうちょっとマネージメント面とか売る方向とか、身の回りのこととか考えないといけないことはあって。バンドであれアイドルさんであれ、表現者の人は常にそういうことを考えていると思うんだけど、そのことを苦しんで苦しんで考えるよりも、楽しんで考えた方が、僕の場合は上手くいくことのほうざ多くて。ガキの頃から今までを振り返っても「つまんねえな、しょうがねえな、こうしなきゃな」って何かに従ってやってもあんまり上手くいったことってなくて、「これヤバいね激アツだね」って思ってやってるときの方が、上手く物事が運んでいくことが多いので。だから、今回もそうですよ。絶叫とやるっていうことに関して、考えていることがすごくある反面、逆にそんなに考えてないから、「これを出してこうなるべきだ」とか、「これを出す目的はこうだ」とかって僕には正直そんなに興味ないっちゃないんだよね。それより「これを出したことで何が起きるのかが楽しみ」っていう気持ちが強いです。ilyoにせよKAGEROにせよ、僕のテリトリーだけでやってたら届かせるの大変な人たちに、例えばタワレコだったらこのアルバムはアイドルコーナーに置かれるみたいなんだけど、そんなことって僕にとってあんまないわけじゃないですか?そういった場で自分の音楽を聴かせることで何が起きるんだろうって、それだけでもすごく意味があると思うし、ただ、そんなことも別に計算してやっているわけじゃないから。ここで何が巻き起こるんだろうなって。たぶん、それは何にしても楽しくて美しいことになるってことだけはわかるから。

濱田:何かしらの成功があるとしたら、こういう音楽のフォロワーが出てきたら、意味があるだろうなって。絶叫はアイドル全盛の時期にバンド形態なのにアイドルって言ってデビューしたんです。可変式で2人になったりバンドになったりというのをコンセプトに始めたんです。その時期はロックを歌うアイドルがたくさん出てきていて「ロック系アイドル」みたいな括りが出来ていました。僕は絶叫の前にプロデュースしていたグループ含めてこのジャンル?を定着させる一旦を担った自負はあります。ここ1年くらいは、アイドルがロックバンドと一緒にライヴをやったりすることって当たり前じゃないですか?だからこそそこに安穏と居続けるんじゃなくてもっと先に進みたかった。そういう意味だと、今回のアルバムも絶対こんな音で誰もやってないじゃないですか?

白水:そうかもしんないですね。

濱田:今までの曲ってライヴを重ねていく中で徐々に歌えるようになってくる感じだったんですけど、今回の曲は2人とも一発でそれなりに歌えたんですよ。こんなに早口でキーも高い曲なんて簡単には歌えないと思っていたんですけどね。2人は普段早口でキーが高く息継ぎする間もないようなボカロ曲も歌ってるんですが、生身の人間向けじゃない歌を普段からLIVEで歌い続けたことで、特殊な呼吸や発声の方法を身につけたんだろうなって(笑)先日も池袋Admでお客さんパンパンで酸素がない中で、50分ノンストップで歌い切ってましたから。たぶんあいつら、エラ呼吸してますね。

白水:違う器官が(笑)。

濱田:じゃないと、あんな曲あれだけ動きながら長時間歌えないじゃないですか(笑)。だからあの2人は違った形で進化してるんじゃないかなって。息継ぎなしでプログレに合わせてまるで音のように歌うっていう。息継ぎポイントないじゃないですか?この人(白水)、そんなこと考えてないですから。「これ、どこで息継ぎすればいいんだろう?」って。

白水:それはKAGEROのメンバーからもよく言われます。「これどこでブレスするんだよ」って(笑)。

濱田:それをあの2人は飄々と歌うんですよ。ilyoの轟音に掻き消されないように周波数の隙間を縫うように音のように歌う。でも感情を込めながら歌うという。これと同じ音楽ってあまり聴いたことが無い。古くなっちゃいますけど、轟音のピチカートファイヴみたいな感じ?(笑)

白水:前にHauptharmonieにも曲を書いてたけど、創り方は全然違いましたね。今回は絶叫に「合わせる」って必要がそんなにないなっていう気がしてたし、合わせたら逆に失礼だなっていう気もしていたんですよね。創る前、さすがに僕らも悩んだんですよ。ilyoとしてはインストをずっとやってきたわけだから。だからどういうのが良いのか、今までの絶叫の曲を改めてしっかり聴いたんですけど、でもやっぱり途中で聴くのをやめて。今までの絶叫っぽいものを書いたところで別に誰も喜ばないなって。

濱田:僕も最初からilyoの曲自体が好きっていうのもあったし、だから出てきたものに対して1つもNGは出していないんですよ。

白水:やっぱり舐められたくないじゃないですか。あとからぐちゃぐちゃ言われたくないからさ(笑)。

濱田:(笑)。

白水:だから曲のイメージがちゃんと伝わ状態までデモも創りこんで、それを濱田さんに送ったんだけど、その時も絶叫はずっとライヴをやってるからさ、デモを送ったその日に濱田さんから返信がなかったんですよ。「えぇ~!?まさか気に入らなかったのかな?」ってちょっと焦って(笑)。それで翌日に、「どうでしたか…?」って電話して。

―そういうところ、すごく繊細ですよね(笑)。

白水:いやあ、やっぱりそこはさ(笑)。

濱田:こっちはただ単に忙しくて聴けてなかっただけなんですけどね(笑)。

白水:でもその後聴いてくれて「すごくいい!」って言ってくれたときは、やっぱ嬉しかったですね。濱田さんだけじゃなくて、魁ももんてろもテンション上がってるって聞いて。

濱田:合わせられたらつまんなかったですよね。だったらilyoじゃなくても良いじゃんって。

白水:そう。ジム(Gtの中平Jim智也)とケンロー(Gt)に言ったのは、「今回僕らは絶叫に『曲提供』するわけじゃないから」っていうことを伝えて。それでみんなやりやすくなってくれたかもしんない。


Photo by Kana Tarumi

―白水さんから見た魁さんともんてろさんってどんな存在なんですか。

濱田:アーティストとして見てます?

白水:アーティストとして見てますよ(笑)。何だと思って見てると思ってるんすか(笑)。都内でちょこちょこやるだけだと人間性ってとこまでは見えないけど、やっぱりツアーに行くと色々わかりますよね。それぞれにしっかりと強いところがあるなって。あとはまぁ、この2人は人間的に全然合わないんだなって(笑)。「なんでこの2人が一緒にやってるんだろう?」っていうくらい。でも、だから3人でやってるんだろうなって。

濱田:それが狙いだったので。「おまえらお互いのこと絶対嫌いだから。別に仲良くしなくて良いから」って最初に言ったんです。「最初から仲悪かったらそれ以上仲悪くならないじゃん」って。そんなことは全然問題じゃないから、ステージの上では力を合わせろって話して。プライベートは全然バラバラで構わないからって。だからたぶん今でもお互いの連絡先知らないと思います。

白水:ダウンタウンみたいでしょ(笑)?

濱田:だから僕が間にいないとたぶん会話はできないです。

白水:でもバランスが良いですよね。どっちかが駄目でも、片方がそっちに引きずられることが絶対ないし。

濱田:絶対ないですね。

白水:それで片方が駄目なときでも片方の力だけで制圧できるエネルギーもあるから。

濱田:相手が沈んでいるときは本人たちはチャンスだと思っていると思います。だから本当のライバルですね。ライバルが沈みそうなときに「ここで私1人でどこまでやれるだろう」って、ただワクワクしているだけですから。

―濱田さんから見たilyoはいかがでしょうか。

濱田:まず白水君は音楽に殉じて音楽に死ぬ人なんだろうなって。ものすごく自分中心で物事を進めていくんですけどとっても繊細っていう、いかにもアーティストだなって思っています。KAGEROは別格として、ilyoとこのままやっていたら絶対面白いことになるっていう一番の理由は、前ちゃん(Drの前川和彦)です。前ちゃんがいることで、このバンドは明らかに他と違うなって。やれることが色々あるし、それをぜんぶ許容して笑っているこの人たちは、懐が深いのか?アホなのか?どっちかだろうって。でもそれくらい、僕の中では、前ちゃんっていう存在は大きい。あとは、ジムさんは“この人自体がギターなんだろうな”って思います。本当に「ギターの人」ですね。ケンローさんは、本当にイイ人だと思います。

白水:ケンちゃんがいなかったら、プライベートも含めて僕は部屋の外に出て行かないと思う(笑)。ケンちゃんがいてくれるから、まだ社会的に人間として保ててるみたいな(笑)。

濱田:ひどい言い方をすると、動物しかいない中に唯一人間がいて、ケンローさんがいることでilyoは人間として認めてもらっているところがあるんじゃないかなって(笑)。

白水:ははははは!でも本当にそう。ケンちゃんがいないとね。

濱田:破滅的なバンドってよくいるじゃないですか?でもilyoはその中でなぜかちゃんと維持出来る絶妙なバランスがある。「ドラム兼ローディー(笑)」のカズマくんもそう。

白水:そもそもカズマがいないと車すら動かないもん(笑)。

濱田:そういう労力系を全部1人で担っていて。うちのマネージャーもそういうタイプなんですけど、それを全然苦にしていないんですよ。「俺がいないと成り立たない」っていうモチベーションを持って生きてる気がします。

白水:たぶん、メンバーみんなそれぞれ、ちゃんとilyoでの自分の役割と立ち位置を感じて行動してくれてるんだと思うんですよね。

濱田:なんせ楽しそうですよね、ilyoって。バンド特有のギクシャクした空気がまるでないですもんね。これだけ大所帯でやっているのに、みんなが仲良く飲みに行ってるってないですよ。

白水:ilyoはすごく意識してずっとそういう風にしていたいなって思ってるんですよ。そう思っているとそうなっていくもんですよ。

濱田:うちもマネージャーも含めて年がら年中4人で一緒にいるんですけど、音楽のこと以外では喧嘩したりすることもないし、よく飽きないなって思います。

白水:前ちゃんに関しては、前ちゃん自身が元々持っているものもあるし、僕もなるべくそうさせてるというか。「この曲はここで前ちゃんがサイリュウムを振って」というのは、こっちから言うことも多くて。ドラムはカズマが叩いてるから大丈夫だよ、みたいな(笑)。

濱田:でも前ちゃんは本当にドラムが上手いんだなって思うのが、どのタイミングで戻っても完璧に入ってくるんですよね。

白水:前ちゃんああみえてドラムちゃんと上手いですよ。でも前ちゃんの存在が、マジョリティな人々、ライヴの現場で「インストとかよくわかんねえや」っていう人たちに刺さる武器になるなーって思って。お客さんとの距離感を縮めるポジションっていうか。ilyoでの前ちゃんみたいなステージを許容できるインストバンドってあんまないと思うんですよ。普通はみんなそういうとこちゃんとストイックだから(笑)。

濱田:本当に、うちのファンは前ちゃんファンクラブみたいなところから始まってますから。「前ちゃん好き好き」から始まって、白水君のことはめっちゃ怖い人だと思ってる(笑)。「あの人は同じ感じで触ったら怒りそうだな」って思われてる感じかもしれない。

白水:最近やっと僕にも少し話しかけてくれるようになったね(笑)。でも確かにえっふーのみんなはあんまり僕に話してくれない(笑)。「くそー前ちゃんは大人気なのに!」って(笑)。

―今は、この先に何かを見据えているというよりは『剥』がリリースされてからどうなっていくのか楽しみにしているという感じですか。

白水:今度のツアーをまわって、そこで絶対に何かが生まれるから、それをもとにそのときに考えた方が絶対楽しいんですよ。先に「今回のツアーはこうやって、これがああなるからこうなるように頑張って、そうするとこうなるから次はここでやりましょう」みたいになっちゃうと、もうツアーが作業になっちゃうんですよね。

濱田:僕も考え方は一緒なんですけど、このツアーをやって楽しかったら、しばらくilyoの曲以外がやりにくくなるだろうなって思います。なので、今創っている曲もあるんですけど一旦止めているんです。で、これは勝手に思っているんですけど、僕らは次もilyoの曲で「もう少しこういう感じで」っていうのをもっと深めてやってみるのも面白いなと思っていて。それと、30分のライヴに色んな曲が混在しすぎるのもどうかと思うので、「絶叫はこれで勝負します」っていう感じを1回出してみようかなって。色々やるのは定期イベントだけで良いかなと。そうじゃないと、これをやった意味がなくなっちゃうんですよ。「こういう音楽どうですか?」っていう提案をするときに、「大惨事ぼっち戦争」とかは、とても分かりやすくて楽は楽なんですけど。絶叫の曲では無いわけで。

白水:あの曲はフロアが大変なことになりますからね(笑)。あれは切り札ですよ。

濱田:僕は『剥』の楽曲をスルメだと思っていて、3回4回聴くと抜けられないと思っているんですけど、それでしばらく勝負しないと面白くないなって。ilyoもたぶん永遠に辞めないし、当面はKAGEROもそんなにめちゃくちゃなペースでやることもないだろうし、曲も書いてもらえるだろうと。それに対して僕らも全力でやって、「こういう音楽どうですか?」っていう提案をし続けたいので、単発で終わるのは嫌だなっていう期待を込めてこのツアーを見たいなと思ってます。今は、「この楽曲でみんなが楽しそうにしてたらいいな」っていう妄想だけをしている感じです。

白水:うん、楽しみだね。移動は超大変だけどね(笑)。


I love you Orchestra公式サイト:http://kagero.jp/ilyo/
絶叫する60度 公式Twitter:https://twitter.com/zekkyo60


おすすめ関連記事: